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バーンチェン遺跡の謎(タイ)

素焼きの器面に酸化鉄の弁柄で描かれた独特な渦巻き模様。

弥生式土器のような簡素な器形に、焼成方法は恐らく器面に残る焼成痕から

野焼きであろうと推測される。

 曲線で描かれているのは植物の蔦か?植物の種子か?莢果を想起させる

裂開果や鳥の眼にも見える、中にはイノシシのような具象的な動物も描かれている。

 アールヌーボーのようなダイナミックで動的な曲線の動き、造形的に見れば

理解不可能な曲線の連続模様、余白がなく器面を覆う抽象的な幾何模様が

想像力を掻き立てる。


遺跡は以前から露現していて、土器類は周囲の村人によって日用品として使用されていた。

ペンシルベニア大学の発掘、調査の結果、紀元前4000〜3500年の土器と判明し、東南アジア、

タイ東北部に高度な文明があったことを実証している。稲作を行い、豚などの家畜を飼育し、すでに

ガラスや青銅器や鉄器などが使われていた。


   博物館入口

バーンチェン国立博物館では発掘品の展示、ジオラマで当時住んでいた住民の生活様式や、

出土した動物の骨から当時の家畜を復元、発掘の様子などを再現している。

博物館の前にお土産屋さんが何軒かあり、バーンチェンの壺などのレプリカを販売している。

ナカナカ良く出来たモノもあり、中には下手くそと叫びたくなるモノもある。

 青銅器は古代メソポタミアで紀元前3000年に開発されたと言うのが定説であったが、メソポ

タミア文明よりさらに500年遡り、東南アジアですでに作られ使われていた。

今から5500年前の先史時代に、銅に錫を溶かして混ぜると、「青銅」という固い金属になると

いう高度な知識を何処から得たのか?その金属がメソポタミア文明より古い時代に何故、東南

アジアで生まれたのか?土器つくりの技術では、粘土に籾殻を混ぜると強度が増すというノウハウを

どこから得たのか?疑問だらけである。

人骨がたくさん発掘され調査の結果、当時住んでいた人種は長身で、現在のラオ族系のバーンチェンの

住民と異なっている。人骨に外傷が認められず、武器などの発掘品がないことから平和な農耕生活を

送っていた事が想像される。


   発掘された人骨


   ジオラマで復元された当時の生活様式


  発掘現場再現ジオラマ



     博物館前のお土産物屋


バーンチェン人は紀元200年頃、忽然と消える。「どこから来て、何処へ去ったのか?」謎である。

 

データ:

バーンチェンに行くにはウドンタニーが基点となる。

ウドンタニーの長距離バスターミナル、17番乗り場から、サコンナコーン方面のバスに乗り、

途中のバス停で降ろしてもらう。

(午前6時から午後5時まで、30分から40分おき、所要1時間)45バーツ

トゥクトゥクかモターサイに乗り換え5分(約6km?)でバーンチェン国立博物館に着く。

片道180バーツ。戻りの最終バスは18:00頃

 

開館日:水曜日から日曜日(月、火休み)

      午前9時から午後4

入館料:150バーツ(外国人)、30バーツ(タイ人)

 

注意:

ガイドブックに「帰りのトゥクトゥクは見つからない」と書いてあった。マサかと思っていたが、まさかがマサかであった。

帰りのトゥクトゥクは見つからないので、トゥクトゥクは往復での交渉をすること。

私はラッキーにも、一本道をトボトボ歩いていたら、俳優の相島一之似のお兄さんにバス亭までクーラー、ガンガンの

高級車に乗せてもらった。




ウドンタニー・タイ東北部の中心都市 


19世紀に出来た新しい街で、フランスがメコン川東岸(現在のラオス西部)をタイから奪って植民地とした時に、

メコン川沿いのタイ領内に25キロ幅の非武装地帯を設けることをタイに要求し認めさせた。

川沿いのノーンカーイにあった総督府はウドンタニーに移された。総督府は現在も残存し、敷地内には

郷土博物館が建っている。


    今も現存する旧総督府の建物


     市民の憩いの場「ノーンプラジャック公園」

ベトナム戦争が始まりアメリカ軍は北爆のために空軍基地を設けた。街は急成長したが1976年ベトナム戦争の終焉とともに

アメリカ軍は撤退。街は経済的な打撃を受けるが近隣の農村からの農作物の集約地として生き延びる。

ラオスのルアンパバーンからビエンチャン、タイのバンコクへと縦断する陸上交通の「要」とし、東北部タイの中心都市として

今も繁栄している。

タイ国鉄のウドンタニー駅から時計塔ロータリーのあるプラチャッタ通り(Prajak Rd)周辺が繁華街で怪しげなマッサージ店が


何軒も目に付く、健全なタイ伝統マッサージを求める人はノーン・プラチャック公園前にやたらマッサージ店が並んでいるが、こちらを勧める。

 

こじんまりした街で街中に見るべきものはないが、郊外には「バーンチェン遺跡」、奇岩で有名な「プー・プラ・バート歴史公園」、

幻想的な睡蓮の海として有名な「タレーブァデーン」がある。

街中にフードコートが至る所にあり、イサーン料理は美味いと聞いていたが、本当に「飯」がやたら美味い。

ベトナム戦争時に空軍基地があった関係か?年老いたアメリカ人の旅行者が多いのもウドンタニーの特徴。

 
 

データ:ウドンタニーへの行き方

タイのバンコクから長距離バスで8〜9時間、国鉄で約10時間

ラオスのビエンチャンからバスで約2時間、タケークからバスで約5時間


                           (文・写真とも 坂本正通)