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                ボーテン廃墟の街、ラオス

 ルアンナムターの北方60Km、近距離バスターミナルからミニバスで約1時間30分、ラオス最北部、中国との国境にボーテンはある。
日本のメディアは報道しないが、ラオス北部は中国政府が推進する一帯一路の「海外進出」のもっとも著しい所である。中国は自国のようにラオス開発をすすめている。ボーテンは特に「ここは中国か?」と錯覚するほど街中に中国語の表記が目に付き、ラオス北部の中国化を象徴している街である。
 中国雲南省(昆明)からボーテンの国境を通過して、ルアンパバーン、フアイサーイを経てタイを縦断、バンコクに至るルート。景洪からムアンシンの国境を通過して、フアイサーイ、ルアンパバーン、ビエンチャン、タイ、カンボジアを経て、ベトナム(ホーチミン)に至る2つの幹線道路が計画されている。
 中国企業のラオス進出によってインフラストラクチャー(インフラ)が整備され、ラオス国民の雇用も拡大されることで、ラオスも恩恵を蒙っているではないかと言う人もいるだろうが、結局は中国企業と一部のラオス人が潤うだけで、一般のラオス人には実入りがない。
 ラオス政府は国内各地の国境地域に経済特区を設け、関税、所得税の減免など優遇措置をとり、外資の誘致を計画している。
2003年にボーテンは中国企業がカジノを中心とする観光開発に乗り出した。ギヤンブル好きな国民性なのに、中国では賭博は御法度、そこで国境を越えた地にカジノをつくり、中国人観光客を呼び込む算段だった。
山奥のうらぶれた集落、未舗装の道路と民家が少しだけの村は激変し、ラオス建築にはあり得ないピンクや黄色、バイオレットの、まるで「おとぎの国」のような街が出現した。カジノ建設にともないリゾートホテルやレストラン、ショッピングモール、大型免税店ができ、投資用のマンションが次々と建設された。
 カジノ誘致によって、暴力団が利権を求めて進出、治安が悪化し、麻薬、暴力事件などの犯罪が頻発し、中国からの出稼ぎ売春婦が闊歩し、カジノで大負けして、金を払えなくなった客が殺されるという事件も発生した。
 2010年にラオス政府はカジノを閉鎖した。カジノ経済特区でラスベガスのように賑わっていた街の終わりはあっけなくやって来た。人工的に造られた街はゴーストタウンと化している。現在、ラオス政府はゴルフ場を建設し中国からの観光客を誘致しようと再開発を目論んでいる。  日本ではカジノ法案が可決されたが、カジノを合法化しギャンブルによって泡銭で収益を得ようとする「さもしい考え」は、そこに暴力団が進出し、治安が悪化するというマイナス面も考えなければいけない。

                                                                              
   大型免税店(前の広場は工事が中断されたまま)
       工事が中断されたホテル
     立派そうなホテル営業している気配はない
                   

  

追:雲南省の昆明からボーテン、ルアンパバーン、ビエンチャンまでの鉄道敷設も計画されている。

データ:
ルアンナムター近距離バスターミナルから約1時間30分、25,000キープ((約335円)
( ボーテンにはバスターミナルがない、ルアンナムター行のミニバスが道路の所々と
イミグレーション周辺に停まっているが、予めルアンナムターの観光案内所でボーテンからルアンナムター行の
バス停留所を聞いた方が良い。)




                        (文・写真とも 坂本正通)